おはようございます!
カイゼン研究会の宇賀です。
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工場の経営者にとって
在庫の数量というのは、
経営上の財務データでも、現場で歩いていても
特に目についてしまうモノです。
工場経営上、
減らすことが良いとはされていますが
現場に聞いてみると
「これは必要な分です」
「会社の基準の3カ月以内に抑えています」
「お客様のオーダー変更によるものです」
などなど
よくよく考えてみると
すぐに理解できない回答なのですが
「あ、仕方ないものなのかな?」
となってしまうということがよくあります。
生産現場にとって在庫は必要な要素です。
トヨタ自動車にも在庫はもちろんあります。
ないのでしょ?と聞かれることもありますが
もちろんあります。
しかし、どう管理しているかというのが
工場によってかなり違いがあるのが現実です。
そこで今回は
トヨタの在庫管理方法を見ていきながら
ひとまとめに在庫と呼ばれているものを
いかに仕分けしてどう扱うか?
を考える材料になればと思います。
まずは、私の前職の経験を振り返りながら
話していければと思います。
工場の製品によって違いはありますが
在庫管理のヒントになればうれしいです。
私は、入社して工場の生産管理部に配属されました。
生産管理部では製品ラインごとに担当が分かれており
私もライン担当として仕事が始まりました。
ライン担当の仕事は大まかに言うと
製造課の生産計画、部品発注、稼働管理、切替管理
物流(外注部品納入、完成品出荷、工場内の運搬)です。
さて、1日の仕事の始まりは
昨日の稼働状況の確認からです。
毎朝、製造現場の朝会広場に行き
ホワイトボードに書かれている
・生産実績
・出荷実績
・停止状況(可動率)
・残業
を記録していくことから始まります。
その計画と実績の差異を確認した後
在庫置き場に行き、
数量が本当に正しいかどうかを見ます。
生産実績-出荷実績=在庫増減量
となるので
その増減量が正しいかどうかを毎日たな卸しするということです。
そして午前中には
稼働状況について上位層に報告をするという流れです。
先ほど在庫確認と書きましたが
トヨタでは
在庫を3種類に分けて管理しています。
(1)非常手持ち
(2)ストレージ(店)
(3)先行品
完成品在庫は以上3つのどれかに必ず
分類されないといけません。
そして各在庫で存在理由が違います。
それ以外の在庫が現場で見つかると、
現場の責任者や生産管理担当は
驚くほど怒られます。(ルールを守れていないので)
そしてこの在庫の種類と管理ルールというのは
工場長や各部長までの承認を経た
法律のようなモノがあります。
新入社員はまず
在庫の存在理由と仕分けを覚えることから始まり
現場と生産管理の在庫管理分担ルールを
理解していきます。
では在庫の種類と管理方法の簡単に説明します。
(1)非常手持ち
■管理者 製造部
■かんばん発行 製造部
■置き場管理 製造部
■使用権限 課長以上の許可
■使用用途
製造責任によるラインストップの場合に
出荷を維持するため。
一言で言うと、製造部の実力を示す在庫となります。
ラインが止まったとしても、
俺たちはこの在庫がなくなるまでに
問題解決できるのだ!という実力です。
(ライン復旧可能時間分)
1日分持っているところもあれば
0.5直分しか持っていないところもあります。
この量は、ラインの稼働実績を反映しながら
製造部内で決められます。
しかし、他ラインと比較されるため、
たくさん持っている課や部は
実力がないということになります。
毎月生産台数は変わるので
在庫量も毎月変わります。
1000台/日と500台/日では
1日分の在庫という基準量も月毎に調整されます。
基本的に、トラブルがなければ月間で
動くことのない在庫となります。
もし生産で異常が起こっていれば
非常手持ちの入出庫実績荷動きがあります。
復旧と挽回をしている時に使用されています。
次は
(2)ストレージ在庫
■管理者 製造部
■かんばん発行 製造部(仕掛けかんばん)
■置き場管理 製造部・技術員
■使用権限 随時使用
■使用用途
お客のオーダーが来た時に
すぐに出荷できる状態、
つまり後工程引き取りに対応するため。
製造部が完成品を生産、
梱包し終わったものを貯めていく場所、
ラインに直結した場所をストレージと呼び、
その場所の完成品の数がストレージ在庫となります。
ラインと直結しているため
完成品のコンベアが行き着く終点です。
なので、置ける数量は決まっています。
どうやって数量を決めるかというと
ラインを新設する際に
・生産台数の能力(何秒で1台できる)
・1日何回物流が引き取りに来るか?
・何分に1回引き取りに来るか?
・お客様の引き取りのばらつきをどれだけ許容可能にするか?(通常は計画に対し±10%で計算)
・製品は何種類か?
・梱包パターンは何種類か?
・出荷先はどれだけあるか?
等の前提をシミュレーションし
どれだけストレージ在庫量が必要か?
という最大値と最小値が決まるので
それに合わせて、場所の大きさも決まります。
あまりなじみがないかもしれませんが
これは
後工程引き取りをするためには
欠かせない場所です。
基本的にオーダー通りに生産するのではなく
オーダーが来ると、ストレージ在庫から出荷され
ストレージ在庫が減った分を生産する。
それが後工程引き取りによる生産だからです。
出荷が少なくなり、
ストレージがいっぱいになるとラインは止まります。
フルワークのような状態ですね。
製造課はこの数量と
お客様のオーダーの量を比べながら
今日、残業をどれくらいするか決めます。
この基準値と実際の数を見て
造り過ぎていないか?
オーダーの量は正常か?
というのが管理されます。
最後になりますが
(3)先行品
■管理者 生産管理部
■かんばん発行 生産管理部(先行かんばん)
■置き場管理 生産管理部
■使用権限 生産管理部
■使用用途
ラインの生産能力を超える
未来のオーダー量、高負荷に対応するため。
生産管理部では
中期の計画(3年分)や月次の計画(3か月)を立案するのですが
お客様(世界中の車両工場)からオーダーが来るので
生産能力が不足する月とそうでない月が発生します。
その負荷が高い月に向けて、
負荷の少ない月に在庫をためて
高負荷時に対応するというのが先行品です。
これを生産するためには
先行かんばんというものが必要で、
あくまでもお客様のオーダーに紐づいている注文であり
出荷先が生産管理部という扱いです。
なので、製品出荷担当の物流課に渡します。
製造現場に渡さないのは
在庫をいつでも作っていい権限を
渡してしまうことになるからです。
(造り過ぎのムダを生んでしまうのを回避するため)
在庫計画というのも直単位で管理され
毎日、計画から外れていないかをチェックします。
そして1日分まで、物流課に渡してよいというルールです。
この先行品は生産計画に組み込まれており
出荷計画+先行計画=生産計画となります。
厳密には生産計画という表現はなく、
出荷計画と先行計画です。
引き取られた分だけ造るというのが基本なので、
生産計画に合わせて造るわけではないということから
そうなっています。
現場が一日に来るかんばんの量を確認し
その量を生産するというのが生産現場の本来の流れです。
以上の3種類となりますが
どの在庫を見に行っても、表示(場所、置き方、種類、量)が
しっかりされており、
生産数-出荷数=差(在庫の増減)
これがどの在庫の量の増減になっているかが
一目でわかるようになっています。
そして、各在庫の存在理由が違うため
どの在庫が計画通りでないか?
によってそれを引き起こしている問題の原因が
異なるということがひと目で理解できます。
そして
よくできているなと思うのは
そしてこのルールがすべての従業員に
浸透しているということです。
現場にとっても
ラインを止めてしまい、すぐ復旧することも分かっている場合
非常手持ちを使うのは非常に面倒です。
上司である課長に、原因を説明して初めて非常手持ちを使えます。
未来に使う予定の先行品を
こっそり使うこともできますし
その方が楽です。
在庫で悪さが隠れるということが一番悪いということが
徹底的に浸透しているというのを
痛感します。
かなり長々と書いてしまいましたが
本日言いたかったことは
ひとまとめに在庫と呼んでいるものにも
種類とその存在理由があります。
すべての在庫数量に根拠があります。
在庫低減活動を行う前に
ひとまとめにして在庫とせず
使用用途と責任を明確にし
現状の数量、本当に必要な量を考え
その差異を埋める活動にしていければよいな
と思います。
最後までお読みいただきありがとうございました!
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